The baddhist image archaically smiles. 2.a sunny spot

暫くたつとある村の子連れの女性がやってきて、「この村はもう何年も日照りがちで作物がよく育ちません。嵐のなかやってきたあなたなら、きっと雨を定期的に運んでくれますね。」といって、丁重に拝んだ。子供は何がおもしろいのか仏像の手に触って遊んでいる。仏像はやさしく微笑んだ。側で雑穀をついばんでいた鳩が空に羽ばたいた。それから暫く立って寺のまわりの民家や田んぼに夕闇が柔らかく纏う頃、ある若い男がやってきた。男は「村はとても息苦しい。ある者の仕業に違いござらん。どうか助けてくれますように。そうすれば作物もよく育つから、お供え物もたくさんあげることができます。」と手を合わせた。仏像は幾分男らしく微笑んだ。男は「おおなるほど、頼もしい。」とそっと呟いて、帰っていった。 翌朝、村の会合に向かう村長が何人かの村人を連れて古寺の前を通りかかった。軒先の仏像をめざとく見つけて、ほんの2,3秒拝むと、「一見薄汚れてはいるが、ひょっとするとなかなか見所のある仏像かもしれぬ。」と傍らの村人達にいった。村人達もそうと思ったのか、手を合わせから村長と会合に向かった。仏像はゆったりと微笑んだ。村長と村人達は満足して去っていった。寺の境内に止まっていた何羽かの小さな鳥が湖の方角を目指して飛んでいった。陽も頂上から僅かに西の方に傾いた頃、若い娘達が通りかかった。見慣れない仏像が泥で汚れているのを見て、「私が拭いてあげましょう。」と近くの湧き水を桶にくんで、持っていた手拭いとたわしで磨きあげた。しばらくすると仏像は元の碧色を取り戻した。その手には金色に鈍く光る輪が巻き付いていた。娘達はにっこり笑って、ここで一休みしようと仏像に蜜柑を供えるとその場で昼飯をとった。仏像は目を細めて微笑んでいた。また鳥が2,3羽空に向けて飛び立った。
 夜になると古寺もすっかり闇に馴染もうとしていたが、仏像には僅かに月影が降りて、柔らかく輝いていた。なにかの会合の帰りであろうか何人かの男が通りかかり、妖しく浮き上がっている仏像を見つけて側によってきた。そのなかの一人がいった。「おお、矢がささりながらなお立っているとは頼もしい。見れば腕も体も筋肉質である。共にあのふとどきな村人を懲らしめよう。」男達はしばらくそこで気勢をあげた。その男達の様子を体の全面に映して、仏像は口角をきっとあげて微笑んでいた。仏像に角が生えたよう見えたのか、男達はどっと盛り上がって帰っていった。近くの野原の方から古寺に向けて緩やかな風が吹いていた。