The baddhist image archaically smiles. 5. the disintegretion

仏像が古寺に封じられた後も、仏像の所には入れ替わり村人がやってきて、何か祈ったり、お供え物を置いたりしていた。なかには広場の井戸の側で仏像の扱いが不届きであり、祟りがあるのではないかというものもいたが、まとめ役の男はじめ何人かの強者が「ここは難攻不落、孤高の尊い村である。この不可視の盾と村長の威光によって、いかなる神仏といえどこの中までなど見通すことなどできますまい。祟りなど心配ご無用である。この期に及んで怖れることは軟弱であり、村長への反逆である。我らは一丸となって剣となり、この戦いにも立派に勝利するものである。」というので黙ってしまった。またそれでも心配する者には「じつは仏像は寺のなかで尊い秘儀を執り行っているのだ。しかし絶対に目にしてはならぬ。石になるぞ。」、あるいは「反逆者として斬られたくばくば、仏像と決して目を合わせて話してはならぬ。」と言って聞かせた。しかし、あまりに村人の仏像へ信仰と興味がかわらないようであるので、男は寺にやってきて仏像に向かって大声で「どうやって村人を扇動しているかはこの際問わないことにする。我に従え。」と言った。仏像がまだ微笑んでいるのを目にして男はさらに腹を立てたのか「この村には神仏は必要ないと村長もいっている。わたしは貴様より恐ろしい阿修羅を何人も知っているぞ。」と続ける。しかし仏像の微笑みはやまず男は策を練るために家へと帰っていった。
それから暫くたったある日、その男は仏像を密かに川に捨てることにした。朝靄に紛れて腹心の男達に仏像をゴザですまきにして、密かに川に流すことにした。途中、早起きの村長に会ったが、「これは、私の鋭い読みでは謀反を起こそうとしたに違いございませぬ。これは騒乱のもとを我が力強い刀にて断つ聖戦であります。」と答えた。村長は仏像の脚がわずかにゴザからでているのを目にしたかどうか、男達が息巻いているのを目にして、そのまま黙って頷いたようだった。男達が川へ仏像を放り投げると、仏像はすまきに目隠しをされたまま、頭の方をわずかに高くして浅瀬の岩に体をぶつけながら、湖の方角に向かって小さくなっていった。仏像の顔には変わらず、不思議な微笑みが漂っていた。