The distorted and intricate arrows ChapterⅠ 6.The aspect of R2

その頃R社人事マネージャの中越は黙然と席に坐って連絡を待っていた。側を行き交う人の声が不思議とぼんやりと聞こえる。今回の案件は正直難しい、と彼は思った。その範囲も対象も、人員を実際どうするのかもいまだはっきりはしていない。そして彼自身内示は別としてオフィシャルな役割は業務の性質上もない。もちろんだからこその調査なのだとも彼は思う。先程、R社取締役の平原から概要を聞いた後、彼は平原のいう通りにS社札幌支店に連絡をいれた。折り返しで営業部長武藤の部下であるという、山岸という男から連絡があった。山岸は課長補佐を名乗り、「ご連絡ありがとうございます。御社の案件につきましては、弊社に小杉という人事アウトソーシングの専門家がおります。彼は経験、人物ともその業務に適任であり、余人には替えがたく、弊社としても強く推薦し、御社のお役に立たせたいと思いますがいかがでしょうか。じつはこの件は御社の平原取締役と弊社の取締役、外山で既に調整していると私は聞いているのですが。」と言った。彼は一抹の不安を覚えたが、直接面識はないにしろ、子会社でもあり、調査もある程度の期間を見込む以上猶予はあると判断し、「それならば結構です。私どもとしても受け入れの準備をしたいと思います。よろしくお願いいたします。」と言った。電話の相手は「詳細についてはまた後で連絡させていただきます。」と言った。彼は重ねて「よろしく。」と言って電話を切ったのだった。彼は自身が人事業務全てに精通しているわけではないし、相手はアウトソーシング専門の会社から来るのだからある程度は任せてよいだろう、いや削減のような場合はS社側に活躍してもらうことがそもそもの上の意図だろうと思い、担当者が決まった旨を平原に報告した。そして、念のためR社からS社に出向している社員にもそれとなく水を向けてみようと思い一報を入れたが相手は留守だった。