an island~an extract from a hidden ship`s log~2.a hunter

あくる朝、船員は目覚めるとまずはこの島の様子を見てみなければと近くにある小高い丘の方に向かって歩き出した。少し進むと古びた銃をもっている猟師のような恰好の男と出会った。「あの、この近くにたくさん船の寄るような港はありますか。」と船員は尋ねた。男は「そうだな。」と頷いて、「とても不思議な格好をしているな。だめだよ。そんな格好で歩いては。前にどこかであったよな。」と言った。男は「いいえ。おそらく初めてです。船が沈んでしまったのです。救命ボートの仲間とも離ればなれになって、それで皆のところに戻る方法を探しているのです。」と答えた。男は「昨日は荒れていたから転覆したんだろう。よくあることだな。みんな一度は遭遇するものさ。」と言った。船員は「それで船の泊まるような港を知りませんか。帰りたいのです。」と言った。狩人は「まあ知っているといえばそうかもな。海は空の延長のようなものだからな。けれどね、君。僕に言わせてもらえば空なんて気のせいみたいなもんだよ。たとえ見ることはできても実際に触れやしないんだから。君は本当のところどう思うのだい。」と言った。「そうですか。ではあの鳥を見ればどうでしょう。立派に飛んでいるのを見れば実感できるのじゃないですか。」と船員は答えた。男は少し大きな声で「君も分からない人だね。空を飛んでいる鳥をどうやってつかむのだい。翼がついていようが羽が生えていようが、鳥は飛んでいる限り、実体のないものさ。鳥は地面におりて、人間に食べられてはじめて存在するに決まってる。その為に俺がいるのさ。」と言った。船員が「あなたの目で見て、そして捕獲する鳥は本物でしょう。」と言うと、男は「すごいだろう。」と言った。船員は「そうですね。直接間近で接するも自然の智慧ですね。」と言って少し息を吸って、「僕は宙を飛んできたんですよ。」と言った。男は特に興味なさそうに「ああ全て分かった。」と呟いた後、「違うね。空から来たなんて全く君はどうかしている。おかしいのじゃないかね。いや失敬、ちょっと理解できなかったものでね。海で遭難して、きっと気持ちが疲れているのだよ。そういう時は地面を裸足で歩くのが一番さ。人間は歩かなくてはいけない。」といった。船員は「では歩くことにしましょう。港はここからどういけばいいでしょうか。」と聞いた。男は面倒くさそうに「まあ俺も詳しいのだけれど。そうだな。丘を越えたところにある平らな土地で毎日、朝市が立つのは君もよく知っているだろう。たくさんの人が集まるし、そこならきっと分かるさ。医者もいるしね。全く最近は山のものでも海のもの何でも買うことができるようになった。時代は変わったね。」と言った。船員が男の指さした東の方向を見ると、緑の小高い丘とその麓に広場のまわりにまるく円を描くように煉瓦造りの家々が立ち並んだ、きれいな里があるのを見ることができた。「あとの道順はあの里で調べな。」と男は言った。船員は男に礼をいって別れた後、「宙を飛ぶことはここでは理解されないのかもしれない。」と思った。昇りかけの美しい太陽が、青々とした空の中で赤々と輝きながら、船員の歩く野原を見守っていた。