a beaver build up a little public garden.3.a lamp and orgel under the sky

カップの中の紅茶の表面に映る小さな空をじっと眺めて、ああ家の中から空をもっと眺めたい、とエアフィールド・スミス・ジュニアは思いました。空のよく見える家を造るには、空からよく見える場所に家を造る必要がありそうです。彼は気持ちを楽にして、他にどんなことがとても大切か頭の中で思い浮かべてみることにしました。やがて辺りは夕暮れ時を迎えて、部屋のとても小さく切り抜かれた窓からも、赤く赤く輝る眠りかけの陽の光が差しこんできました。狭い部屋の中は、外よりも少し先にいつのまにか夜の気配が満ちてきて、いつもの夕方と同じように、わずかに、そしてどことなく淀みはじめたようでした。地中に眠る陰なるものが、昼と夜の狭間のこの混沌とした時間に沿うように、薄暗がりのなかで壁から抜け出してうごめいてくるようです。彼は、唇をきゅっと結ぶと、小枝のマッチを擦って、梟のジェシカが森の樫の木を寛く穿って拵えてくれた洋燈の内側に灯をともし、ノートより少し大きなくらいの窓際の四角い鏡の前に置かれたオルゴールのつまみを丁寧に何度も捲きました。柔らかく光る金属でできた中央の林檎の木には、毬のようにしっかりとした、赤い林檎の美しい実がいくつもついていて、オルゴールの奏でる綾音に合わせてみな優しくゆるやかに震えます。この林檎の木のまわりには、翼のついた3匹の愛らしい猿が、房のついた青いベレー帽をかぶり、つぶらな瞳をきっと前に向け、きれいな耳をピンと立てて、ひとりは口を開けて歌を歌い、ひとりは横笛を唇にあて、ひとりはバイオリンを大事そうに肩に抱えて踊っています。彼はあの湖畔の友達の猿のマーガレットもいつも肩からかけている薄紫色のストールに包んで、じつは翼をもっているのかしら、今度会ったらそっと聞いてみようと思いました。洋燈の明かりとオルゴールの幾つもの旋律が重なった規則的な音色が広がってしばらくすると、部屋の小さな暗がりに交じっていたあのそれらしく繕ったように冷たくざらりとしたものがゆっくりと溶けて、丸く温かな空気が部屋に満ちてきました。エアフィールド・スミス・ジュニアは、洋燈と音楽はきっと空気をきれいにする、と思うのでした。時刻はそろそろ夜。星や月の柔らかな光が辺りに満ちて、いつのまにか部屋の中にも差し込んでいました。