a beaver build up a little public garden.4.a escargot carry a cargo

山の稜線に沿うように佇む深く碧い森の方からとても静かな声が響いて、湖の辺りを青い波のような風がさっと吹きぬけた後、エアフィールド・スミス・ジュニアは家の近くに大きな何かが止まる気配を感じました。それからまもなく部屋の小さな窓をコツコツとノックする音がして、緑色の瞳をして耳の尖ったカタツムリが、部屋の中に小走りに滑り込んできました。カタツムリは背負っている黄色のリュックサックから、小さな籠を取り出して、「この通り宅急便ですが、水をお借りしてもよろしいでしょうか。」と言いました。スミスがテーブルを案内すると、カタツムリは、テーブルの中央に座り、水差しから水を大事そうに平たいお皿にうつして、その上に籠を下ろすと、上に絹のすこし大きめのハンカチーフをかけました。そして、カタツムリは中指の大きな指輪を目の前のハンカチーフの包みに優しくかざしました。スミスがしばらく見守っていると、その花柄のハンカチーフに包まれた籠の輪郭は柔らかく光を帯びながら、丸く膨らんでいくのでした。しばらくしてカタツムリがにこりと微笑してハンカチーフを除けて籠を開くと、この辺りのものよりもずっと鮮やかに映える柿や栗、蜜柑や林檎や梨と一緒に、楓の樹液や蜂蜜などの手作りの硝子の小さな瓶がぎっしりと詰まっていました。カタツムリはコホンと喉をならして「お届けものです。」と言いました。スミスが「どちらからですか。」と尋ねると、カタツムリは「あなたなら自ずとわかることでしょう。果物は皆、育った場所の記憶をどこかに残していますから。葉っぱや実の形や色、香り、もちろん味にも。もっとも私は果物に関してはそれほど詳しいわけじゃございませんけれど。」と言うと、カタツムリは胸元から手帳と万年筆を取り出して、受け取りの署名を求めました。スミスがサインをして、「ここまで来るのはきっとたいへんだったでしょう。」と言うと、カタツムリは「ここは光が届きにくい。それに空と地面を結ぶ場所が近くにあるといいですね。」と答えました。小さな窓からその小さなカタツムリをそっと送り出すと、森の端っこの白樺の木の真よこに、羽のついた透きとった大きなカタツムリが、月の光を受けてきらきらと輝きをはなっていました。エアフィールド・スミス・ジュニアは空は皆にとってとても大切なのだと思いました。