A fruit tree at the base of mountain.5.

夜遅くまだ朝の光が届くその前に、空翳り、雷鳴く冬の嵐になりました。絶え間なく不規則に細かく方向をかえ、強く吹きすさぶ風は、既に地面に積もった雪をも再び舞いあげては、濛々とした雲をつくり、葉っぱをぐるっととりまいていきました。けれど、葉っぱは呼吸のリズムを上手に整えれば、星や月の光、温暖な風だけでなく、嵐の葉にあたる氷の粒からさえも、遠くの星々や広大な森に点在する生き物の意思の小さな痕跡を感じることに気づきました。それでも、嵐の中の風は確実に葉っぱの表面を凍らせていきました。葉っぱはだいぶ凍えて重くなった葉をいっそのことブンブンと無理矢理動かそうかとも思いましたが、記憶の中の嵐を探し、いつも以上にしっかりと葉っぱを広げていることにしました。生き物の芯というのは、案外丈夫なものだと葉っぱは理解しました。嵐がやみ、また宙空が藍色の球体の景色をあらわすと、葉の上に重く積もり落ち着いた氷はやがて、その重みですっぽり抜けて、残りの氷粒も、光にみな優しく解けていきました。その頃には葉っぱはほんのりと青く光るようになっていました。