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A fruit tree at the base of the mountain.14.

葉っぱのジョルジョは、赤や黄に彩られる秋の野原でも、青く澄んだ川辺でも、ちいさな傘をくるくるとしてみました。やがて、葉っぱは小高い丘の麓の街にやってきました。その頃にはもう葉っぱは、「宙空の鏡」を曳いて歩くことにもだいぶ慣れてきました。この丘の麓の街には煉瓦造りのタイルを敷きつめた路がめぐりめぐって、山裾に建つ家々や平らな場所にある公園、そのまわりに立ち並ぶお店を縫い縫いしては、ゆるやかに広がっていました。葉っぱは、あるお店の前に通ると、コートやマフラーのかけられたウインドウのガラスに映った自分の姿をみて、ちょっとびっくりしました。いつのまにか、しっぽが生えていたのです。葉っぱは、教会近くの街のお医者さんの白い家の扉を叩いて、診察室の中に入りました。部屋の中には、オーディオからピアノの音色が優しく奏でられて、机の上には厚い専門書ときらきらする銀の智恵の輪、小さなゆりかごにリボンの付いた赤いワインのボトルが置かれていました。葉っぱは「しっぽのようなものが生えてきたようなのですが、大丈夫でしょうか。」とお医者さんに言いました。お医者さんは微笑して、「たいていの生き物にはしっぽが生えているものです。目に見えるかどうかはべつとして。」といいました。葉っぱは「これはしっぽらしいしっぽなのでしょうか。」といいました。お医者さんは、「きっと大丈夫ですよ。けれど目に見えるしっぽは、目に見えない透明で長いしっぽのほんの一部であるようなのです。」といいました。葉っぱのジョルジョは、振り向いて自分のしっぽをつかもうとしましたが、簡単そうなのにつかめません。お医者さんは微笑したまま、「しっぽをつかむことはむずかしいのです。」といいました。お医者さんは、診察室のゆるやかにカーブを描く窓から、遠くを眺めて、風変わりな踊りをしているひとびとに目をやりました。お医者さんは「ああやってぐるぐつ回っているもののなかには、しっぽをつかもうと必死なものもいるようです。」といいました。葉っぱは「しっぽは本体の一部を映すものなのですね。」といいました。お医者さんは、「きっとそうですね。そして前進しているとき、しっぽはとてもしゃんとしているものです。」といいました。秋と冬のあいだの澄み渡った夜空には、もう月が輝いていました。