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A fruit tree at the base of the mountain.15.

葉っぱのジョルジョは、小高い丘の中腹に建つ木の香りのする宿屋にとまって、その夜はとても静かに眠りました。あくる朝、葉っぱが宿屋をでると、街は冬の気配をたたえて、路にはつむじ風が吹いていました。つむじ風は、ビュービュー鈍い音をたてながら、そこかしこで草や木、はては街灯までも巻き伏せてしまおうとしているかのようです。葉っぱは、生命とは吹き溜まり、ではないのだと思い、しっかりとコートの襟をたてて歩くことにしました。街の草木も、住んでいる動物たちもみな心のこもった、けれど簡潔な挨拶をかわしながら、ちょっと早足で歩いています。しばらくすると雨が降りだしました。雨は複雑でたえまない残像を路面の上に刻み、軽やかな音をたてていきました。子どもたちは、色とりどりの短いレインシューズをはいて、一本の道幅の広い通りをトコトコと小走りに家路をいそぎます。葉っぱは傘をひらいて、なおも歩きました。葉っぱは街角の煉瓦造りのまるい窓のある本屋に入りました。葉っぱは本屋に入ると、店の中はピカピカで真新しい、白や赤や黄など色彩やかたちも言語もさまざまな本がならべられていること知りました。葉っぱは首を傾げて、カウンター横にいる店主に、「古文書を探しているのです。」と尋ねました。店主は微笑して、「うちはとても繁盛しているのです。古文書がいつも古本屋にあるのではありません。古文書は新しい本にこそ潜んでいるのです。」といって、店の一角を示しました。「好きなだけ見ていってかまいません。」と店主はいって、コーヒーカップからコーヒーを喉に注ぎ込んで、新聞に目を戻しました。葉っぱずらりと並ぶ棚の、窓から八つ目の棚に進んで、めぼしい本を選びました。綺麗な花壇の並ぶ坂道をのぼって、宿屋に帰ると、部屋の扉にしっかり鍵をかけて読みつづけました。葉っぱはしばらくの間、毎日同じことをくり返しました。葉っぱは育つ方法を探していました。なりゆきのみにまかせるのでなく、ちょっと脚が生えたら、自芽が大切と葉っぱは思うのです。風にだけ、土にだけ左右されて生き物があるのではないはずです。みずから芽をだしてこそ、生きているということです。はじめからあるものを否定してもはじまりません。葉っぱはちょっと関係のなさそうな本で、星空のもとで魔方陣をかさねるお話を読みました。調和と方向のあるお話に思えました。葉っぱはそのお話の断片を重ね合わせ、翻訳したり、自分でも魔方陣をなんどもなんどもつくってみました。黄金の法則なんてきっとないけれど、過程と中身をともにみつめようと葉っぱは思いました。宿屋の四角い窓から見える冬めく宙空には小さな星々も月もどこか燦々と耀いていました。