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A fruit tree at the base of the mountain.16.

葉っぱのジョルジョは、宿屋のソファに座って少し微睡みました。宿屋の主人の話では、この森のなかの丘の街の伝承で、嵐の夜に、みにくい鬼が旅人の眠りの間に入りこんでくるといわれているそうです。葉っぱは、あのみにくい鬼に気づかないほど、盲目ではないと思うのでしたが、宿屋の主人は「動物たちや葉たちが消えるのは、意識の裂けめにしょうじる恐れや疑念からなのです。みにくい鬼は音もなく近づいては、この裂けめを襲うといわれています。」といって、おおみみ族から伝わったというオルゴールのような四角い箱を葉っぱに見せました。その青い箱は蓋にも、側面にも、光はなつ古代文字と彩りさまざまな意匠が刻まれていました。主人は「音楽は楽しみだけのためにあるのでないのです。隙をみたすのです。この箱はそういう徴があるのです。」とかいって、グルグルと取っ手をまわしました。葉っぱは、箱から繰り出される複雑で絶え間ない音色を耳にすると、なんだか気持ちが澄みわたって、近くも遠くもよりはっきりするような気がしました。「兎も角、この四角い箱はとてもよい音色を奏でますね。」と葉っぱはいいました。主人は「最後は気迫が大事ですね。」と微笑して、箱を葉っぱに手渡しました。葉っぱは、その四角い箱を大事に抱えて、宿の部屋に入りました。ドアの錠前をしっかりと閉めると、葉っぱは部屋でもトランクでもきちんとしまることは重要だと思いました。箱は自然に複雑な音色をより強く奏ではじめました。窓辺には野原でとった花が飾られていて、窓からは、宿屋のある丘と真南の丘を縫い上げるようにつらなっている石造りの陸橋を望むことができました。この明るく輝く宙空のもとで、よりしっかりと魔方陣を描くには、ちょっと工夫が必要だと葉っぱは思いました。葉っぱは、まず小さな部屋を探すことにしました。