A fruit tree at the base of mountain.17.

葉っぱのジョルジョはあくる日からしばらく、教会近くのあき家を紹介するお店を尋ねて、いくつかちいさな部屋をまわりました。けれどよい部屋はちょっとみつかりそうにありません。葉っぱは、とても高い塔にのぼり、森と丘をめぐる坂の街の四方を眺めて、それからかえりに街の時計屋にふと立ち寄りました。その店は、通りからひとつ路地にはいったところにあるのでしたが、通り藍色に明るく透き通った銀時計のきれいな看板があるせいかどうか、お客さんの絶えない時計屋であるようでした。葉っぱは店の中に入ると、百合の刺繍の施された布がかけられている地球儀のそばのケースの真ん中にちいさな時計をみつけました。「とても素敵な品ですね。」と葉っぱはいいました。店の主人は、「その時計には『ブルータスの鈴』という鎖がついているのです。」と店主はいいました。葉っぱがちょっと首を傾げるのをみて、店主は「これまでに起こったことは、時やかたちをかえてくりかえされる。それを忘れないための音色をいつか鳴らすのです。」と言いました。言い値でよいというので、葉っぱはひとつ身につけて帰ることにしました。宿屋に戻ると、主人が微笑して、「ちいさな部屋だけを探すと、きっとみつからないでしょう。」と言いました。「この宿屋も、客室だけがあるのではありません。けれど客室は他のものとちがって、すこしづつ増えるのです。」と主人がかさねていうのを聞いて、葉っぱは「お家にはぴったりの枠組とわけあうしくみが必要ですね。」とめずらしく大人びた声で言いました。 葉っは未来を想い、葉っぱなり方法を考えはじめました。煉瓦造りの橋の架かる川のせせらぎが、初夏にむけていつもよりはっきりと響いていました。