A fruit tree at the base of mountain.19.

深夜になり、普段なら辺りがシンと静まっていく頃、北風が突如強くなり、あらしに変わりました。葉っぱのジョルジョは、あらしと前兆は明確に区別される、けっして同じではないのだということを既に知っていました。あらしは常に局地的なものですが、生きもののことも、この世界の広がりにもさして関心をもつことなどなく、ただ吹き荒れていくのです。窓辺においたブルータスの鈴がチリチリと鳴りました。葉っぱは窓をゆるがないように、何かが滑りこまないようにしっかり閉ざすと、音楽を小さく掛けました。あらしは混沌であり、この世界と黄泉の世界をかき混ぜることができるのかもしれませんが、あらしのおもうようにこの世界を塗り替えることができるわけではないのです。あらしはあるいは、やがて生きものの砥石であったと記録されることになるのかもしれません。けれど、それはこの瞬間ではないのです。陽もあがる頃になると、あらしはいつのまにかどこかにいってしまい、葉っぱは窓をあけて外の空気を吸いました。葉っぱはまたしばらく眠ると、元気に外にでかけていきました。きっとそこまで歩いていこう、葉っぱはそう思いました。