The baddhist image archaically smiles. 4.the confusion

 何日か経ったある日、陽もだいぶあがった頃、評判や噂を聞きつけて、別の何人かの男たちがやってきた。その一人が仏像を見るなり、「あの男どもに荷担するとはじつにけしからん仏像である。」と蹴りを入れた。しかし、仏像はとても堅かったので、男は脚の骨を折って、その場に倒れこんだ。それを見た仲間が今度は恫喝して、もっていた鉈で仏像に斬りかかった。しかし、青銅製の鉈は仏像に僅かに食い込んだだけで、根元からぽっきりと折れた。仏像は不気味に微笑んでいた。男達は慌てて退散して、他の村人にこっそりと「あれは村に仇なす仏像かもしれぬ。」とこっそり言って回った。その中の一人はまとめ役の一人に会い、「あれはあなた様とは別の方法で村を治めるつもりではありますまいか。わたしとしてもあなた様とおなじく憂慮すべき問題と思いまする。ここは何か対処することが肝要。」と言った。まとめ役は「よいことを伝えてくれた。大儀であった。何事も素早く賢く力強い私にお任せあれ。」と答えた。夕方に村のまとめ役の一人が何人かの腹心を連れてやってきて、仏像にいった。「私はこう見えて村の為とあれば神仏も恐れぬ。聞けばお主、名工の作の一つであるそうだが、この村はおまえさんにとって実に田舎であろうな。」仏像はそっと微笑んだだけだった。男は続けて、「お主は私のような武張った男は嫌いであろうな。」と言った。仏像は幾分口角を歪めたようだった。「そうか、そうかよく分かった。」とその男はいい、少し離れて所にもどって腹心に「この仏像はこの村をばかにしている。そして村が不穏であることになにか関係があるのかもしれぬ。なにしろ神仏は結界の外の他の神仏や人間とも話ができるというからな。効果があるかは分からぬが、村人から仏像が見えないように、また仏像も村を見ることができぬように古寺の奥にいれてしまえ。」と腹心に命じて、仏像を寺のなかに放り込んだ。仏像の顔には翳りが表れたが、それでも仄かに口元を緩めていた。男は「む。気味が悪い。さてはあれを目にしたのではないか。それにまかり間違って石にされてはかなわぬ。」といって腹心に命じて仏像に目隠しを施した。男は部下を連れて意気揚々と古寺から去っていった。境内の側には村人の一人が飼っている白い鳥が静かに坐っていた。