2009-01-01から1年間の記事一覧

a beaver build up a little public garden.7.cafetrium

エアフィールド・スミス・ジュニアは、いつものコートに身を包んで、湖畔にある街の中央の広場の近くのカフェに出かけました。コーヒーとほのかな木の香りの漂うこのカフェは、音楽の絶え間ない調べを背にして、寒い冬の間街中で暮らす動物たちやこの街にも…

a time slip into A.C.2005 from A.C.4000.1.

ここはとある国の会議室。6,7人の男女が大きな円卓に集まって座っている。初老のプレゼンターの一言でミーティングがはじまった。 「さてお集まりの皆さん、ここに一枚の写真がございます。これこそ先頃、我が国で最初にタイムスリップに成功した証拠に他な…

a beaver build up a little public garden.6.a cafe and airport

エアフィールド・スミス・ジュニアはその晩遅く、分厚いベッドの上で薄い毛布に包まって久しぶりにぐっすり眠りました。夜は徐々に足音を潜め、静まりかえり、堅く冷えていきました。やがて暁頃になると、辺り一面に霜が降りて、部屋の小さな窓ガラスの表面…

a beaver build up a little public garden.5.the night-side on the sky

エアフィールド・スミス・ジュニアは夜空がもっと見たくなって、クローゼットの中のベージュのトレンチコートを背中から羽織り、紫と青の糸で縞状に編まれたマフラーを首に捲いて、壁にかけた緑色の小さな帽子を頭にのせて外に出ました。外の空気は夕方より…

a beaver build up a little public garden.4.a escargot carry a cargo

山の稜線に沿うように佇む深く碧い森の方からとても静かな声が響いて、湖の辺りを青い波のような風がさっと吹きぬけた後、エアフィールド・スミス・ジュニアは家の近くに大きな何かが止まる気配を感じました。それからまもなく部屋の小さな窓をコツコツとノ…

Long time no see but little invisible.2.a small cover on deep fountain

昔々空と地の境がまだ遠く曖昧だった頃、ここから山を幾つか越え、海を渡ったあたりのお話です。この国には、大きな火山が幾つもあって、平野からでも盆地からでも、人々が晴れた日に瞳を東に向けると、空の端の方に微かに立ち上る白い煙をみな見ることがで…

a beaver build up a little public garden.3.a lamp and orgel under the sky

カップの中の紅茶の表面に映る小さな空をじっと眺めて、ああ家の中から空をもっと眺めたい、とエアフィールド・スミス・ジュニアは思いました。空のよく見える家を造るには、空からよく見える場所に家を造る必要がありそうです。彼は気持ちを楽にして、他に…

Long time no see but little invisible1.a treasured sword in a family?

昔々まだ空と地の境が曖昧だった頃、ここから幾つか山を越え、海を渡ったあたりのお話です。当時この国は人間の歴史から見ればほんの一時のことなのでしょうが、長い平和の時をむかえておりました。この男が成人を迎えようとする頃、親が「お前は山で遊ぶの…

a beaver build up a little public garden.2.fallen leaves make a note.

エアフィールド・スミス・ジュニアは、巣を作るのだったら、ふかふかしていて、空の見える、とても素敵な巣を作ろうと思いました。そこで家に戻って、巣作りについてじっくり考えることにしました。彼は帽子を手に持って、谷間に流れる小川にずっと前から架…

a beaver build up a little public garden.1.a prologue

秋も緩やかに深まり、周りの山々や湖、少し遠くに見える海の景色も七色の木の葉で丁寧にゆっくりと覆われていくようでした。まだ若いビーバーのエアフィールド・スミス・ジュニアは、丘の斜面でお昼寝をしていましたが、目と耳元がくすぐったくなってふと目…

watch a "THIS IS IT"

映画”THIS IS IT”、私も映画館で観てきました。マイケル氏の生前から既に企画されていたこともあるのでしょうけれど、映画はその後の急逝の予兆を観る側に思い起こさせることなく、マイケル氏も他の出演者、製作者もコンサートへの期待と希望に満ち満ちてお…

island~an extract from a hidden ship`s log.21.among starlit sky

そのひとが店を出るとほぼ同時に、今まで店の奥にいたのであろうか、店員が3人店内に顔を出した。店員たちは店の主人や男たち、船員を眺めて何か言いかけたが、主人がそれを手で制して、「分かっているな。これまでと同様、今回も店内では何もなかった。さあ…

island~an extract from a hidden ship`s log.20. to shield himself behind the shield-鄱

そのひとは、するりと店に入ってきたが、既に店の中にいる者はみなすぐにその存在に気づいた。そのひとは、深い緑色のコートの襟を立てて、赤い帯のついた灰色の帽子を眼深くかぶり、円形の盾を背負っていた。室内の熱気に満ちてだいぶ重たくなった空気の中…

island~an extract from a hidden ship`s log.19 a way of utilizing shield -鄯

街燈のオレンジの明かりは、うっすらとした霧に包まれておぼろげに輪郭を和らげて、薄く湿った路面にも揺れるような姿で映り込んでいた。秋は徐々に深まっているらしく、船員は耳の先と首元の素肌に洗いたての絹のようなひんやりとした秋の気配を実際にしっ…

island~an extract from a hidden ship`s log〜18.miners

秋の朝はひんやりとしていて心地よく、船員は背中からやわらかくそよぐ風にそっと促されるようにして、一歩一歩路を進んだ。船員の瞳は明るく澄んで、持続的に見開かれて、周囲の景色を末までしっかりと映しているようだった。胸のポケットの位置にはあの平…

Nobels Fredspris

アメリカ合衆国オバマ大統領のノーベル平和賞受賞のニュース、私もとても驚きました。 核廃絶の行動に先んじる強力なインセンティブの付与なのでしょうけれど、ノーベルが自らの遺言で作ったノーベル賞の設計図に込めた思いのひとつの顕れとして受けとめられ…

island~an extract from a hidden ship`s log.17.an orchard and a farmer

路は静かな秋の気配に包まれて、船員のこめかみのあたりにも心地よいくらいのひんやりとした音色をかえした。船員が尚も路を歩くと、路の左前方に広大な敷地に地平線の彼方まで続くような果樹園らしき森のような緑があらわれた。とくに壁や柵で囲われている…

island~an extract from a hidden ship`s log.~16.a forest keeper

霧のような小雨があがり、空から薄日が差してくると、湖畔には湿った木々と土の香りが連なって、ひんやりと静まった空気を形づくった。船員が男たちが去った湖畔を見まわすと、湖畔の巨石に忽然とたつ木のそばに、ひとりの男が立っているのに気づいた。男は…

island~an extract from a hidden ship`s log~15.a calm lake and fishermen

船員が目を覚ますと、草原は早足で明るくなって、横になった体勢から頭をわずかに浮かせて空を見上げると、地平線の東の端の方から朝日がまさに昇る頃のようだった。船員は起き上がろうと、枕元を見ると、きれいな銀色の羽が小石で地面に留められていて、そ…

an island~an extract from a hidden ship`s log~14.planets and young plant.

辺りが夜になると、どこからか風がわずかに吹いてきて、船員が眠っているそばの木の中央に優しく触れると、複雑に無数に重なり合った葉と枝に触れて鈴の音のような玲玲とした音色を奏でて通り過ぎた後、しばらくするとまたどこからか戻ってくるようだった。…

an island~an extract from a hidden ship`s log~13.a special postal service.

空に戻る雨のかわりに、辺りには漆黒の夜がどこからかそっと浸みてきたようだった。船員は歩くのを止めて、眠りにつく場所を探すことにした。背の高い木が路のすぐ近くに枝を大きく広げていたので、船員はその根元に泊まることにした。その深い根元には夜が…

an island~an extract from a hidden ship`s log~12.on a misty rainy day

三重四重に遠く連なる山々の嶺から、秋の景色が湧き、流れをつくっては、夏の気配をやわらかく追い、円くひろがりながら、船員の歩く草原の中の路を撫でて海の方にむかって寄せていった。草原を丹念に縫うように進む白い路の先には、なだらかな丘の上に糸杉…

an island~an extract from a hidden ship`s log~11.a shipping agent

船員が街へと続く路をひたすら歩いていると、背中にざわりとした気配を感じた。船員が振り返ると藍色の長いコートを着た男が白馬に小さな翼が生えたような動物にのって、すこし浮き上がるようにしてやってきた。その男と奇妙な動物は船員を少し追い越してふ…

an island~an extract from a hidden ship`s log~10.closeby a hotel.

船員はカフェに寄り、その店長らしき男に「港のある都市についてご存知ありませんか。その道順を伺いたいのですが。」と訪ねた。その男は「よく分からないが、あなたが目指すのがこの里でないのなら、この里には路は一本しか通っていないから、いずれにしろ…

an island〜9.in a public garden Ⅱ

若草色の男は船員についてくるようにいって少しその場を離れると、船員の方をそっとななめに振り返って、「しばらくこのことは内緒にしておいてくださいませんか。」と囁いて、船員が頷くと「あの木はここでは倒されることでしょう。」と言った。船員は「防…

an island~an extract from a hidden ship`s log~8.in a public garden Ⅰ

教会の天井の方から差し込む日差しと小鳥のさえずり、人が賑やかに行き交う音を耳に流れ込むので、船員は目をさました。黒衣の男は既に講堂の掃除を始めていた。男は起き出した船員の方を見て、「よく眠れましたか。ちょうどよかった。あと一時間もすれば、…

an island~an extract from a hidden ship`s log~7.in a church

橋を渡ってすぐ、船員が赤い煉瓦造りの家々の間を抜けると、その教会は突如、目の前に現れた。辺りは夜の闇に包まれようとしていたが、白と黒に交互に塗り分けられたその建物は夜空のもとでもはっきり教会だと分かった。船員が教会の正面にある大きな扉を開…

an island~an extract from a hidden ship`s log~6.a falconer.

船員がカフェをでて、街中をながれる小川沿いの小径を歩いていると、黒い大きなマントを羽織って背のそれほど高くない男が、背中のマントの先端を右手で掴んでコウモリの翼ように広げて何かを包んではなにやらモゴモゴと呪文のような言葉を呟くと、次の瞬間…

an island~an extract from a hidden ship`s log~5.in a village

船員がその里にやっと近づいた頃には陽もとうに西側に傾き始めていた。里の東側には森が広がり、森とその里を隔てる小高い丘に木製の大きな風車がゆっくりと空に円を描きながら、風を柔らかくとらえては軋むような音を立てていた。あいかわらず道は舗装され…

an island~an extract from a hidden ship`s log~4.under construction

太陽が空の頂点よりも少し西側に傾きはじめた頃、白く輝く三日月を眺めながら船員はゆっくりと立ち上がって、再び歩きはじめた。里の方角に目を向けると、かなり遠く彼方に南の黄色い大きな果実をいっぱいに乗せた台車が馬に引かれて揺れながらゆっくり進み…