2009-12-01から1ヶ月間の記事一覧
エアフィールド・スミス・ジュニアは、いつものコートに身を包んで、湖畔にある街の中央の広場の近くのカフェに出かけました。コーヒーとほのかな木の香りの漂うこのカフェは、音楽の絶え間ない調べを背にして、寒い冬の間街中で暮らす動物たちやこの街にも…
ここはとある国の会議室。6,7人の男女が大きな円卓に集まって座っている。初老のプレゼンターの一言でミーティングがはじまった。 「さてお集まりの皆さん、ここに一枚の写真がございます。これこそ先頃、我が国で最初にタイムスリップに成功した証拠に他な…
エアフィールド・スミス・ジュニアはその晩遅く、分厚いベッドの上で薄い毛布に包まって久しぶりにぐっすり眠りました。夜は徐々に足音を潜め、静まりかえり、堅く冷えていきました。やがて暁頃になると、辺り一面に霜が降りて、部屋の小さな窓ガラスの表面…
エアフィールド・スミス・ジュニアは夜空がもっと見たくなって、クローゼットの中のベージュのトレンチコートを背中から羽織り、紫と青の糸で縞状に編まれたマフラーを首に捲いて、壁にかけた緑色の小さな帽子を頭にのせて外に出ました。外の空気は夕方より…
山の稜線に沿うように佇む深く碧い森の方からとても静かな声が響いて、湖の辺りを青い波のような風がさっと吹きぬけた後、エアフィールド・スミス・ジュニアは家の近くに大きな何かが止まる気配を感じました。それからまもなく部屋の小さな窓をコツコツとノ…
昔々空と地の境がまだ遠く曖昧だった頃、ここから山を幾つか越え、海を渡ったあたりのお話です。この国には、大きな火山が幾つもあって、平野からでも盆地からでも、人々が晴れた日に瞳を東に向けると、空の端の方に微かに立ち上る白い煙をみな見ることがで…