2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

tsutsuji no komichi

午後 浦和街あるき つつじの小径、あるいは壁。携帯カメラにて。

an explanatory note for this blog

〜The devo 後書きのかわりに〜 学生時代、ヨーロッパにいった時だけ「何人かのハーフですか。」と聞かれることが多く、なにかの独特の社交辞令の類かとも思いながら、同時に自分の中でなにやら少しうっかり嬉しく感じることが、20世紀末まで暗黙に日本に漂…

The distorted and intricate arrows ChapterⅠ 1. a prologue

空気がわずかに爆ぜている、と彼は思った。しかしなぜこの段階でここまで、と彼は自問するのだった。ここは東京に本社を置くIT関連企業Qグループの一企業であるR社が入る、優雅といってよい姿で海の側に立つ15階立てのビルの10階。この海のよく見えるフロア…

The baddhist image archaically smiles. 6. an epilogue

男は仏像が遠くなるのを見届けると、さっそく広場に出向き、「あの仏像は我の賢い説得によって秘儀を我に伝えると、次なる悟りの場所へ自らの足で粛々と旅だっていった。」と宣言した。陰で腹心が「祟りがありますまいか。」と口々に心配すると、男は小声で…

The baddhist image archaically smiles. 5. the disintegretion

仏像が古寺に封じられた後も、仏像の所には入れ替わり村人がやってきて、何か祈ったり、お供え物を置いたりしていた。なかには広場の井戸の側で仏像の扱いが不届きであり、祟りがあるのではないかというものもいたが、まとめ役の男はじめ何人かの強者が「こ…

The baddhist image archaically smiles. 4.the confusion

何日か経ったある日、陽もだいぶあがった頃、評判や噂を聞きつけて、別の何人かの男たちがやってきた。その一人が仏像を見るなり、「あの男どもに荷担するとはじつにけしからん仏像である。」と蹴りを入れた。しかし、仏像はとても堅かったので、男は脚の骨…

The baddhist image archaically smiles. 3.an omen

翌日の午後、古寺からだいぶ離れた広場で昨夜の男達が『あの仏像は我々にあの物達を懲らしめよ。」と言っていたぞ。』とひそひそと話していた。側では娘達が何人かで連れ立って、「今日もあの仏像の側で、遊びましょう。」と笑いあっていた。そこに、幾人か…

The baddhist image archaically smiles. 2.a sunny spot

暫くたつとある村の子連れの女性がやってきて、「この村はもう何年も日照りがちで作物がよく育ちません。嵐のなかやってきたあなたなら、きっと雨を定期的に運んでくれますね。」といって、丁重に拝んだ。子供は何がおもしろいのか仏像の手に触って遊んでい…

The baddhist image archaically smiles.1.a prologue 〜coming along〜

ある嵐のあくる日、ある男が川の側の流木を拾っていると、川の浅瀬の方に人型をした物体が浮かんでいるのが目についた。男が素足で川にはいって近づいてみると、その物体はどうやら仏像であるらしかった。流木と一緒に引き上げてみると、その仏像は泥で幾分…

The devo11. an epilogue〜taking the air〜

その朝、彼は鳩を空に上げる前に、街角のビザ屋に立ち寄った。このピザ屋はテイクアウト専門で、手狭な店のカウンターのすぐ側に煉瓦で組まれた大きな窯がでんと構え、釜の内側では真っ赤に焼かれた薪が時より爆ぜては薄いピッツァの生地を赤々と照らしなが…

The devo10-Ⅱ.The picture hanging in the beautiful sky

「鳥の通う路の中でも、とくに空の路はとても大切にしなければいけないと思うのだ。」と彼は言った。鳩は「そうだね。鳥の立場からも言わせてもらえれば、紀元前3世紀ごろからローマ街道が整備されたことによって、物流や人の交流、軍隊の移動が容易になっ…

The devo10-Ⅰ.The picture hanging in the beautiful sky

7月のある日、彼はシエナの街やできるだけ遠くの景色を空から眺めたくなって、マンジャの塔へ向かった。家を出る頃には既に陽は頭上にあって、カンポ広場の入り口までくると人々は一様に目を眩しそうに目を細めて歩みを進める。彼は広場の中程までくると、新…

The dove 9.The surface and depth stratum 〜a feast〜

シエナの夕暮れは美しい。南の国らしく、夕日も力強く赤い色をしているが、同じように赤茶けた一面の建物にあたり、円く溶け合いながら、一方で微妙な加減で折り重って影をつくる。影さえわずかに赤みがかっているようで、焼きつけるような夏の日差しの余韻…

The dove 8.The surface and depth stratum 〜the transformation and fission〜

彼は荒れ模様の男達と鳥をみていると、とても酔うどころではなく、わずかな囁きや兆しにさえ、緑色の無数の葉に強い雨と不規則に変化する風が絶えず殴りつけるような心のざわめきを感じるのだった。彼が少しの間、咬み合っている鳥たちを目で追っていると、…

The dove 7.The surface and depth stratum 〜entanglement〜

塔から街に降りた後、彼と鳩は街を歩きつづけた。彼は雑貨店に立ち寄り、店員の勧める中身の真っ赤なオレンジ五つを薄茶色のガサガサと音をたてる紙袋につめてもらうと、次に足を運んだ本屋では紅茶色の表紙をした真新しい辞書を一冊見つけて買い、オレンジ…

The dove 6.The birdwatching at the top of “Torre del Mangia” 〜dove che sia〜

あくる朝、鳩が珍しく自分から「どうしてもあの塔の頂上にいく。」と聞かないので、彼と鳩は街の中央のカンポ広場に建つマンジャの塔へと向かった。彼は1階の受付で一人分の入場券を購入し、一段一段ゆっくり上がっていったが、小脇に抱えた鳩が徐々に重く…

The dove 5.The surface and depth stratum 〜parallelism〜

ローマやミラノやパリといった大都会に比べればだいぶ静かな南ヨーロッパのこの街でも、中心部をなす広場に近づくにつれて、食料店や土産のお店が増えて、夏の暖かな気候を満喫しようとする北国からやってきた青白くて、幾分背の高い外国人の観光客や、地元…

The dove 4.The dialogue

チリエージョと鳩は、広場へ続く坂道の途中のテラスがあるカフェに入った。彼はお店の作りおきのピザのなかから、程よい大きさの四角いマルゲリータ二枚と大きめのカップに入ったカプチーノを一杯注文した。道に大きくはみだしたテーブルに備えられた木のイ…

The dove 3. In the house.

チリエージョは何かがゆっくりリズミカルに脚をつつくので目を覚ました。陽は既にだいぶ高く昇り、お昼近くになろうとしていた。ソファーからベッドの端の方にいつの間にか移動していた鳩は少し不満そうに「朝食の時間は過ぎてしまったようだね。お腹がすい…