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A fruit tree at the base of mountain.3.

楓という楓を彩りゆたかに、紅くあるいは黄色に染めあげた透明な秋の風は、川沿いの木柴で力強く笛の音を奏で、入江で輪舞を踊り、葉っぱの目の前を通り過ぎて、遥か遠く西方へ駆け足で旅立っていきました。葉っぱはシンと冷えた初冬の空気に触れ、キュッと身を引き締めました。向こうの丘の大きな樹木たちは、冬こそ明くる季節をつくるのだ、といってみな優しく微笑みました。光の瞬きで始まった生命は、広がり続ける宇宙の中で、幾百万の共鳴だけでなく、ほんのすこしの敵意にさえも覚醒を促されることを葉っぱはいつしか覚えていました。そうするとギリリと重く感じる痛みさえも、虚無への抵抗であり、真に覚醒している証しであることが理解できて、葉っぱはもう一度、青く燦燦と輝く葉をしっかりと宙空にむけて広げる気持ちになるのでした。世界とつながるには根っこが大切だ、そうして果実を届けるのだと葉っぱは森の只中、原野の端っこで思うのでした。葉っぱは空色の四つの輪の魔方陣を小さな絵筆で丹念に描いて、深い深い藍色の宙空をそっと見つめました。ちょうど同じ頃、冬の寒さが宙空を磨き、月影が辺り一面をやわらかく照らしました。しばらくして、西の原から白雪がちらつく山々の稜線と細長い糸杉のあい間の小道を辿って、追伸つきの初冬の便りが届きました。