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A fruit tree at the base of the mountain.8.

葉っぱのジョルジョは、幾百億の星が輝いたのち、空高く晴れわたる頃、小高い丘の麓で、真白い封筒に入った昔都のあった西方の河辺のサクラ色の断片(かけら)を宙空の鏡に優しく溶かしました。青く澄んだ鏡の水色の水面にサクラ色の花びらのような明かりが灯ったのはそのときのことです。ジョルジョは暁のなお藍色の空のもとで、サクラ色の彩りをながめて、この小さな鏡であっても、宙空から零れる断片(かけら)の一部が受けとめきれず、また零れてはながれ続けていることをあらためて理解するのでした。すこし離れたところで、なにかの獣が「ガルガルル、ガル、ガルル。」とくぐもった唸り声を繰り返しあげているのが聞こえます。「お皿が必要だ。それもいくつか。」とジョルジョは思いました。宙空に瞬きをかえすのにも、葉っぱらしいはたらきをするにもそれなりの造形が必要のようです。光は受けとめなくてはなりません。朧気で曖昧な鏡にくらべて、お皿はよりはっきりとしたかたちが必要なのです。それに宙空の鏡の球体を地面に転がしているわけにもいかないようです。あの草食獣が通りがけに踏んでしまうかもしれません。やがて大きな船になるとしても、と葉っぱのジョルジョは森の片隅で小舟の上に泉(ふんすい)を造るような気持ちでしごとにとりかかることにしたのでした。