The simple tales to hold the earth by its tail.14.a strange sunflower "forest".

昔々、遙か西の国の港を巡り、やがて未知の南の国を目指したという船団が、小高い丘と坂の多い港町に寄港したあと、暁に遙か遠くの洋上へ向けて帆をはり、今日も尚秋から春にかけて大陸沿いにひんやりと冷たく吹く風にのってしばらく航海していた頃のことです。丸くはずむ月が夜空に浮かんだ明るい夜に、帚星が尾をひいたその瞬間、この船団が白鯨の群れと遭遇したと航海記録に残っている前後のお話です。
 高い山脈の間のたいへん広い平野に、緑の小高い丘が点在する村がありました。あるとても寒い冬が明けようとする頃、果たして自然のいたずらであるのか、陽光翳り、あたり一面が重く、鉛色の風景へと変わりました。いつもならば春の季節。桜の咲く頃なのでしたが、一面の暗さのなかで、桜は咲かないのか、咲いてもひとの目にうつらないのか、どこにも見当たりません。妖精たちは広場に集まり、ぶるぶるふるえながら、相談しました。ある妖精が、「ここはどうにかしてあの雲を切りひらき、太陽の光を村にあてなくてはならない。」と言いました。議論も中程に入った頃、ある妖精が、「兎も角、太陽のいる方角をさがそう。」と言いました。妖精たちは、まず太陽をさがすことに決め、「太陽をさがすには、向日葵がよい。」といって、緑の小高い丘の一角に、一群の立派な向日葵を植え、その周りに小さな家を建てました。あくる日もそのあくる日も黄色い向日葵は、ときよりゆっくりと回転して、太陽をさがします。しかし、いっこうに太陽は見つかりそうにありません。妖精の中には「怠けてるんじゃないか。」とか、「いや土壌そのものが凍っているのじゃないか。」、「向日葵ひと種類ではそもそも信用できないじゃないか。」などど話し合いました。そこに長い衣を優しげに纏った旅人が通りかかり、「これは舶来の向日葵ですが、どうぞ植えてみてください。」と言って、橙色の向日葵の株たちを手渡しました。妖精は、橙色の向日葵の温かな色彩に促されて、黄色の向日葵の咲く隣の一角にこの橙色の向日葵の一群を植えました。橙色の向日葵も元気よく根付き、黄色の向日葵もつられて一層黄色くなったようでした。それから日がたち、妖精が黄色と橙色の向日葵の花の射す方を眺めると、薄日がさしているようにもみ見受けられます。そこで妖精たちは、高山に咲くという赤い向日葵の株たちをはるばる取り寄せて、黄色と橙色の向日葵に隣り合う一角に植えました。少し時間が立って妖精たちが黄色と橙色と赤色の向日葵の指す方角をみるとやはり、薄日が射してくるように思えます。妖精たちは元の飛行船に雲掃の機能を加えた次世代型の小さな飛行船をたくさん飛ばして、雲をかきわけ太陽の光を取り戻すことにしました。やがてこの場所は四角い家々と一面に緩やかに組まれた三色の向日葵の群生する丘となったとのことです。
 笛と竪琴、バイオリンを抱えた楽団が、箱型の馬車で千里万里を旅した後、森と水の豊富な東の国に皆で伝えたとのことです。やがて、お話はみな東の言葉で訳され理解されて、柿と夏みかんの表紙の平たい緑色の絵本となりました。そして、雪降る夕、祭りで聞く鐘の音を思いながら、銀色のさらや燭台の置かれたテーブルのそばの暖炉の前に有る明るい色のソファーで、親たちが子供達の愛らしい手を優しく握って、安らかな呼吸であやしながら、読むようになったとのことです。