2009-01-01から1年間の記事一覧

The baddhist image archaically smiles. 3.an omen

翌日の午後、古寺からだいぶ離れた広場で昨夜の男達が『あの仏像は我々にあの物達を懲らしめよ。」と言っていたぞ。』とひそひそと話していた。側では娘達が何人かで連れ立って、「今日もあの仏像の側で、遊びましょう。」と笑いあっていた。そこに、幾人か…

The baddhist image archaically smiles. 2.a sunny spot

暫くたつとある村の子連れの女性がやってきて、「この村はもう何年も日照りがちで作物がよく育ちません。嵐のなかやってきたあなたなら、きっと雨を定期的に運んでくれますね。」といって、丁重に拝んだ。子供は何がおもしろいのか仏像の手に触って遊んでい…

The baddhist image archaically smiles.1.a prologue 〜coming along〜

ある嵐のあくる日、ある男が川の側の流木を拾っていると、川の浅瀬の方に人型をした物体が浮かんでいるのが目についた。男が素足で川にはいって近づいてみると、その物体はどうやら仏像であるらしかった。流木と一緒に引き上げてみると、その仏像は泥で幾分…

The devo11. an epilogue〜taking the air〜

その朝、彼は鳩を空に上げる前に、街角のビザ屋に立ち寄った。このピザ屋はテイクアウト専門で、手狭な店のカウンターのすぐ側に煉瓦で組まれた大きな窯がでんと構え、釜の内側では真っ赤に焼かれた薪が時より爆ぜては薄いピッツァの生地を赤々と照らしなが…

The devo10-Ⅱ.The picture hanging in the beautiful sky

「鳥の通う路の中でも、とくに空の路はとても大切にしなければいけないと思うのだ。」と彼は言った。鳩は「そうだね。鳥の立場からも言わせてもらえれば、紀元前3世紀ごろからローマ街道が整備されたことによって、物流や人の交流、軍隊の移動が容易になっ…

The devo10-Ⅰ.The picture hanging in the beautiful sky

7月のある日、彼はシエナの街やできるだけ遠くの景色を空から眺めたくなって、マンジャの塔へ向かった。家を出る頃には既に陽は頭上にあって、カンポ広場の入り口までくると人々は一様に目を眩しそうに目を細めて歩みを進める。彼は広場の中程までくると、新…

The dove 9.The surface and depth stratum 〜a feast〜

シエナの夕暮れは美しい。南の国らしく、夕日も力強く赤い色をしているが、同じように赤茶けた一面の建物にあたり、円く溶け合いながら、一方で微妙な加減で折り重って影をつくる。影さえわずかに赤みがかっているようで、焼きつけるような夏の日差しの余韻…

The dove 8.The surface and depth stratum 〜the transformation and fission〜

彼は荒れ模様の男達と鳥をみていると、とても酔うどころではなく、わずかな囁きや兆しにさえ、緑色の無数の葉に強い雨と不規則に変化する風が絶えず殴りつけるような心のざわめきを感じるのだった。彼が少しの間、咬み合っている鳥たちを目で追っていると、…

The dove 7.The surface and depth stratum 〜entanglement〜

塔から街に降りた後、彼と鳩は街を歩きつづけた。彼は雑貨店に立ち寄り、店員の勧める中身の真っ赤なオレンジ五つを薄茶色のガサガサと音をたてる紙袋につめてもらうと、次に足を運んだ本屋では紅茶色の表紙をした真新しい辞書を一冊見つけて買い、オレンジ…

The dove 6.The birdwatching at the top of “Torre del Mangia” 〜dove che sia〜

あくる朝、鳩が珍しく自分から「どうしてもあの塔の頂上にいく。」と聞かないので、彼と鳩は街の中央のカンポ広場に建つマンジャの塔へと向かった。彼は1階の受付で一人分の入場券を購入し、一段一段ゆっくり上がっていったが、小脇に抱えた鳩が徐々に重く…

The dove 5.The surface and depth stratum 〜parallelism〜

ローマやミラノやパリといった大都会に比べればだいぶ静かな南ヨーロッパのこの街でも、中心部をなす広場に近づくにつれて、食料店や土産のお店が増えて、夏の暖かな気候を満喫しようとする北国からやってきた青白くて、幾分背の高い外国人の観光客や、地元…

The dove 4.The dialogue

チリエージョと鳩は、広場へ続く坂道の途中のテラスがあるカフェに入った。彼はお店の作りおきのピザのなかから、程よい大きさの四角いマルゲリータ二枚と大きめのカップに入ったカプチーノを一杯注文した。道に大きくはみだしたテーブルに備えられた木のイ…

The dove 3. In the house.

チリエージョは何かがゆっくりリズミカルに脚をつつくので目を覚ました。陽は既にだいぶ高く昇り、お昼近くになろうとしていた。ソファーからベッドの端の方にいつの間にか移動していた鳩は少し不満そうに「朝食の時間は過ぎてしまったようだね。お腹がすい…

The dove 1.a prologue

少し背が高くすらりとした男が街の中心へと続くなだらかな坂道をゆっくり登っていた。街の中央へとつづくこの道は、メインストリートの割にとても狭く、馬車一台通るのがやっとというほどで、両側には居住区のアパルトメントが空へと競うように隙間なく連な…

The dove 2.The invisible but consequent bird

男が広場を通って、そこからだいぶ離れた所にある家に帰り、父親と母親に商売がご破算になったことと戦闘にやむなく参加し撤退してきたことを伝えると、「いますぐ我が家の槍をもって再度戦場にむかうべきだ。そうでなくてはいけない。」と父親がいつになく…

二百年後の昔話 第2話

どこまでも見透せるかと思うほどに澄み、その一方でとても深い色合いをした湖のほとりに、ある山桜の木が立っていました。その桜の木は湖のまわりのなだらかな地形やほんの少し背が高く、穏やかな姿をしているためか近くからはもちろんのこと、湖のほとりの…

not cover but cushion

作家須賀敦子さんはエッセイ「大聖堂まで」のなかでフランスに留学したときの体験を次のように語っています。「はじめてのヨーロッパは、日本で予想していたよりもずっと厳しかった。言葉の壁はもちろん私を苦しめたが、それよりも根本的なのは、この国の人…

聞えるもの、聞く耳。

まだ子供だった頃、頭のいいひとたちはみな聞いたことそのものだけで瞬時に判断したり上手に批評できるのだといつのまにか思っていたのでした。 「リセプター」(受容体)とは、おそらく生物学由来の概念で、コーチングでも扱われています。これは、耳介や外…

the barrier

4月5日(日)の北朝鮮のテポドン2号の発射からあっという間に1週間が過ぎました。日本の上空を通ること、そして誤って日本に落下する可能性があることについて心配し、注目していました。結果、「無事」に通過した模様。私も一時は安堵のため息をついた一人…

桜の夜

19:00 上野公園にて 写真を載せるなら、写真が話してくれそうなものをといつも思っているのですが、06年製の携帯電話の付属カメラで。もっと爽やかな桜も撮りたかった。なお、上野公園は桜のほのかな香り吹くすこし下方にお酒の濃厚な香りが漂っていました。

cherry blossom-time

あの桜はいったいどこで見たのでしょうか。日本に住んだことがある人なら誰でも、頭のなかにふと浮かぶ桜の風景の一つや二つはあるに違いないと思います。私もJR埼京線の十条駅〜板橋駅間で朝ひときわ混んでいる満員電車から垣間見る桜には10代後半から20代…

桜咲く。

用事の帰り、新宿御苑で桜を観てきました。公園案内によると約1,300本もある桜は、随所に点在していて、多種類で咲く時期も異なることが影響しているのか一見すると本数ほど圧倒的という印象こそ感じないものの、都会の整備された公園という立地条件でもそれ…

a diversity

ボックスでない二人掛け座席の電車が懐かしい。最近首都圏の普通列車ではあまり見なくなりましたが、このシートのある空間は今も昔もロングシート(車両の窓側にのみ席があり、座った乗客は見合いになる)の空間よりもノイズに対して寛容な空気が流れている…

二百年後の昔話 第1話

昔々、都会からすこし離れたある村に鹿が一匹やってきました。村人は、まだ若くそれなりに毛並みのよさそうなその鹿を後で皮を剥いで毛皮にしてもいいし、食べてしまってもいい、せっかくだからと村の囲いの中で飼うことにしました。 それからしばらくたって…

with emotion

二十歳を過ぎるころまでは「冷静なものの見方」というものが言葉通りに存在して、たくさんの人がそれを駆使して問題を解決したり、ときには「あつい」議論をしていると心のどこかが思っていたようです。これは地理や歴史ですら点にならない部分にのめり込み…

ある回想〜その1〜

「あなたにとってとても印象に残るキスの思い出をひとつあげるとしたら?」と聞かれて、ある人なら幼稚園の頃の自分よりも幾分背の高い子との事故のようなチューを思い出すかもしれないし、あるいは中学生のころの一生懸命なそれを脳裏に浮かべるのかもしれ…

an atmosphere

場の雰囲気とは何かをときどきふと考えていることがあります。 ある辞書によると雰囲気とは「その場にかもし出されている気分」のことだそうです。いまだ定量化されていないにしても、おそらくその場の物理的な明るさ、温度、音、匂い、風通し、湿度などに加…

内側の世界で

ブログの更新をする前にアメリカではオバマ大統領が誕生し、日本は暦の上では春のようです。 21日未明のの大統領就任演説は、私もテレビでリアルタイムで見ていました。二ヶ国語放送には慣れているはずなのに、演説するオバマ大統領の声や文章が明確なためな…

The kindhearted space

今日のさいたまはよい天気です。 一時期は自分の机の上の書類やメモの類まで断片化し、てんでバラバラな方角に吹き飛ばしてどこかの乱気流に投入しそうだった部屋まで到達した北風も、他の温かなところから吹いてくるまわりの風のおかげか幾分やわらぎ、他の…

「不況」というもの

最近はアメリカのCNNなどの放送を聞いても「Recession」や「Depression」。日本のテレビや新聞を見ても、「不況」の二文字が踊っているようです。 もちろん、今私達がどんな場所に立っているのか、前提としてどんな影響下にあるのかを知ることができるの…